病人と幼馴染





「起床―!!」

 いつものマリエッタの声で目が覚めた。
 少しボーっとしてから上体を起こす。

 途端

「っ!!」

 激しい頭痛。
 俺は、反射的に手を額に当てた。
 伝わってくる熱は、いつもよりも熱い。

 駄目だ。
 熱なんて認めるな。
 ガルシアと神無の捜索があるんだ。
 それに、皆に迷惑を掛けるわけにはいかない。
 いつも通りを装うんだ。

 俺は何とかベッドから抜け出し、ふらふらっとドアへと向かう。
 頭がぼーっとする。

 バンッ!!

 勢いよく開かれたドア。

「コラッ、ライル!! さっさと起きなさ――――」

 俺は、マリエッタの言葉が言い終わる前に、意識を手放した……。



 □ □ □



 額に伝わる、ひんやりとした感覚で目を覚ました。
 目の前に人がいるのは分かるのだが、未だ頭がぼーっとしていて誰か分からない。
 しだいにハッキリしていく。
 そこにいたのは、幼馴染の少女、リタだった。

「目が覚めた?」

 そう問いかけてくるリタ。
 俺は「あぁ」と答える。

 額に手を伸ばすと、まだ少し冷たいタオルが乗っかっていた。

「これ、リタがやってくれたのか?」
「ええ。貸して、そろそろ温くなってきたでしょ?」

 タオルをリタへと手渡す。
 リタは水の張った洗面器にタオルを漬け、軽く絞ってから俺の額に乗せた。
 ひんやりとした感覚が気持ち良い。

「ありがとう」

 そう言うと、リタは頬を微かに赤く染め、微笑んで答えた。

「ねぇ、ライル。早く良くなるおまじないをしてあげる」
「おまじない?」
「そう、おまじない。ちょっと目を瞑ってて」

 俺はリタの言うように目を瞑った。
 額に乗っかっていたタオルの感覚が消える。

 そして――――

 額に一瞬触れた、やわらかい感触。

「え?」

 俺は目を開けてリタを見た。
 リタは、顔を赤く染め、そわそわしている。

「リタ、今――――」
「今のは、ライルにしかしないんだから……」

 俺の言葉を遮ってリタが言った。
 そして、そのまま部屋の入口まで歩いていき、立ち止まる。

「早く、元気になってね」

 そう、ボソッと言って、リタは部屋から出て行った。
 自然と笑みが零れる。

「そうだな、早く治さないとな」

 俺はそう呟いて目を閉じた。