Calm daily life of Arrancar





 ― 迷子 ―

「――――」

 スノー・ナイトは困っていた。
 自分の部屋へ戻りたいのだが、どの通路を行けば辿り着くのかサッパリ分からない。
 どの通路も簡素過ぎて、何処も一緒に見えてしまう。
 今いる通路もさっき通った気がするし、通らなかった気もする。
 スノーは、はぁ……、と溜息を吐き、再び自分の部屋を探す為に歩き始めた。




「…………此処かな?」

 スノーは何だか見覚えの有るような無いような扉の前に辿り着いた。
 この扉の先が自分の部屋の様な気がする。
 あくまで気がする。
 確かめるには部屋に入ってみるしかないわけで、

「……お邪魔します」

 もし違った時の為に、スノーはそんなことを言いながら扉を開けた。
 扉を開けると、2人の人物と目が合った。
 1人はダルそーにごろ寝しているちょび髭のおっさん。
 第1十刃のスターク。
 そしてもう1人は、頭部と顔の左半分に仮面を付けている、ちょっと露出度の高いまな板少女。

(スタークさんの従属官かな?)

 なんてスノーは思った。
 とりあえず自分の部屋ではないと分かったスノーは、

「お邪魔しました」

 と言って扉を閉めた。

「まてまてまてまてまてぇーーーーー!!」

 物凄い勢いで閉めた扉が再び開く。
 扉を開けたのはまな板少女だった。

「何、何のよう?」

 まな板少女が言った。
 スノーは今ので少女にビビリ、あの……、その……、と上手く言えないでいた。
 そんなスノーを見て、スタークは溜息を吐きながら体を起こし、

「まぁ、とりあえず部屋に入りな」

 と言った。
 ダルそうにしてはいるが、さすが大人だった。




「ということは何、道に迷って部屋に戻れなくなって、うろちょろしてたらこの部屋に辿り着いたってこと?」

「……そう」

 スノーがどもりながら説明すること30分。
 それをまな板少女、リリネットは、50文字以内で見事まとめてみせた。
 部屋に戻れないことになのか、リリネットに上手くまとめられたからなのか、スノーはしょんぼりと俯いた。
 そして、

「ふあぁ〜……」

 大きな欠伸をするのだった。
 リリネットが盛大にこける。
 スタークはスノーの欠伸がうつったのか、再び寝転び、大きな欠伸をした。

「眠い……部屋に帰りたい……」

 なんてマイペースな奴等だ、とリリネットは思った。

「……随分と眠そうだな」

 自分も眠そうな顔をしながらスタークが言った。
 スノーはコクリと頷くと、

「昨日会議室出てから迷ったから、全然寝てない」

「「な、何だってーーーーー!!」」

 スノーの言葉に、リリネットはともかく、さすがのスタークもマジで驚いた。
 再び欠伸をするスノー。
 そんなスノーを見てスタークは、

「仕方ない、今日は此処で寝ろ。明日お前の部屋まで連れてってやる」

「本当?」

「ああ、本当だ。明日リリネットが連れて行ってくれる」

「私かよ!! て言うか、今からスタークが連れて行けばいいじゃない!!」

「駄目、俺は今から寝るの」

「黙れオラ!!」

「げふぉ!!」

 リリネットの踵落としがスタークの鳩尾に減り込んだ。
 意識を失うスターク。
 このままでは一生起きることのない眠りに付くであろう。
 そんな2人のやり取りを見て、スノーは此処で寝れるのか心配になるのだった。




 翌朝、リリネットは空腹で目が覚めた。
 そういえば昨日はスノーが来た所為もあって、夕飯を食べていないことに気付く。
 隣を見ると、爆睡している2人の姿(うち1人は泡を吹いている)。
 スタークはいつものことだし、スノーは1日ぶりの睡眠だ。
 まぁいいか、なんて思ったリリネットは、朝食を食べに静かに部屋を出て行った。

 ――――そして夕方。
 朝食ついでに(1人で)遊んできた(寂しい)リリネットは、部屋に戻って愕然とした。
 爆睡している2人の姿(うち1人は泡を吹いている)。
 ワナワナと怒りで拳を振るわせるリリネット。

「いつまで寝てるんだボケェーーーーー!!」

「「げふぁ!!」」

 リリネットの拳が2人の鳩尾に減り込む。
 顔を青くし、泡を吹く2人(うち1人は既に吹いている)。
 リリネットは泡を吹いているスノーを見て、

(……何か、聞いてた奴と違うな)

 そんなことを思うのだった。