Calm daily life of Arrancar





 ― 紹介と実力 ―

 虚夜宮内にある、十刃達が集まり会議をする部屋。
 そこに、藍染、そして藍染と共に死神サイドから離反した元3番隊隊長市丸、元九番隊隊長東仙。
 そして、藍染により選抜された10体の破面、十刃達が集まっていた。
 いったい何で集められたのか分からない十刃達。
 そんな十刃達に藍染は、

「実は今日、君達に紹介したい者がいるんだ」

 と言った。
 入っておいで、と藍染が言うと、部屋の扉が開き、1人の青年が入ってきた。
 2本の大きな角が付いた仮面を付け、白い死覇装を着た、白髪の青年。

「スノー・ナイトだ。皆、仲良くしてあげてほしい」

 スノーは無言で、ぎこちなく頭を下げた。
 本来ならこれで今回の集まりは終わりのはずだった。
 だが、1人の十刃がスノーを睨みながら言った。

「オイ、新入りのクセして一言も無しか? あ?」

 右顎部分に仮面を付けた、第6十刃。
 グリムジョー・ジャガージャック。

「何だ、何も言えない腰抜けか?」

 グリムジョーは席を立ち、スノーを挑発する。
 しかし、スノーは何の反応も見せず、ただボーッとグリムジョーを見ていた。

「あらあら、藍染隊長、どうします? スノーちゃん喧嘩売られてますよ」

 市丸が悪戯な笑みを浮かべながら藍染に言った。
 藍染は特に焦ることもせず、いつもの笑みを浮かべたまま、

「スノー、グリムジョーに君の実力を見せて上げなさい。此処にいる者達は、君の実力を見せれば文句は言わない」

 スノーは藍染を見て、頷いた。

「何だ? 俺とやるのか? 腰抜け!!」

 グリムジョーが体勢を低くし、戦闘の態勢に入る。
 さぁ、どうやって来る?
 一瞬そんなことを考えたが、正直なところどのように攻めて来たって、やることは決まっている。
 やることは唯1つ。
 返り討ちにし、捻じ伏せるのみ。

「さぁ、来い――――」

 さぁ、来いよ!!
 そう言おうとした瞬間、スノーはグリムジョーの視界から消えていた。
 響転――――死神で言う瞬歩にあたる高速移動術。
 こういうパターンは相手の後ろを取るのが常識。
 グリムジョーは持ち前のスピードで振り向こうとする。
 しかし、

「――――!!」

 グリムジョーの後頭部に当てられた、スノーの右手。
 そこに、赤黒い光が集まりだす。
 虚閃――――霊圧を1点に集中させて打つ、破壊の閃光。
 ヤバイ!!
 グリムジョーはとっさに避けようとするが、間に合わない。
 スノーの右手に集中した赤黒い光が、グリムジョーの顔面めがけて放たれ――――なかった。

「もういいよ、スノー」

 藍染に一言で、スノーは右手に集中させていた霊圧を散らす。
 グリムジョーはその場に尻餅を付き、額から頬にかけて、1滴の冷や汗を流した。

「皆、スノーのこと、宜しく頼むよ」

 藍染が言葉が、静まり返った部屋に響く。
 部屋から出て行く藍染、市丸、東仙。
 スノーも、もう1度全員にぎこちなく頭を下げると、藍染達の後を追って部屋から出て行った。




「――――」

 グリムジョーを始め、誰もその場から離れない。
 グリムジョーの力は、認め方は違えど誰もが知っている。
 十刃に選抜される実力だ、そう簡単には負けるはずはない。
 しかし、今のはどういうことか。
 今回初めて紹介された新入り、スノーは、この場にいる誰もが追い付けない程のスピードを持っていた。
 そして、あの躊躇いのなさ。
 ゴクリ、とグリムジョーは喉を鳴らした。
 藍染が止めなかったら、間違いなく自分は死んでいた。
 グリムジョーは震える右腕を左手で押さえ、そのまま右手で床を殴った。
 砕ける床。
 スノーが出て行った扉を、グリムジョーは睨みつける。

 次は、次は絶対にその顔面を殴り飛ばしてやる!!

 グリムジョーはそう、心に誓うのだった――――