Calm daily life of Arrancar





 ― 誕生 ―

 その部屋には、とても大きな水槽のような物があった。
 中は黄緑色の液体で満たされており、そこには1人の青年が入れられていた。
 何も身に着けていない全裸の青年で、胸の部分には大きな孔が。
 また、頭部には大きな2本の角が付いた”仮面”を付けている。

 プシュッという音と共にその部屋の入口が開き、1人の男が入ってきた。
 白い装束の、オールバックの男である。
 男の名前は藍染惣右介。
 尸魂界争乱で死神サイドから離反した、元護廷十三隊五番隊の隊長である。
 藍染は水槽に浮かぶ青年を見て、笑みを浮かべた。

「やっと完成した。私の、私だけの――――」

 脳裏に浮かぶ白髪の青年。
 死神サイドから離反する際に、一緒に虚圏に連れて行こうと考えていたが失敗し、連れて来ることは出来なかった。
 しかし、藍染は”ある方法”によって、その青年そっくりな破面を作り出すことに成功した。
 その方法とは、

 尸魂界にいた時に採取した青年の血液サンプルと、実験により作り出した虚の細胞サンプルの調合。

「さぁ、出て来るんだ。私だけの雪夜!!」

 恍惚の表情で藍染は言った。
 水槽のガラス部分がフッと消え、中の黄緑色の液体が流れ出す。
 中の青年は重力に従い、その場に崩れ落ちた。
 コツコツと音を立て、藍染が青年へと近付く。

「おはよう、私のスノー・ナイト」

「…………スノー……ナイト……?」

 スノー・ナイトと呼ばれた青年が、自分の名前を繰り返し言いながら、頭を上げ藍染を見る。

「そうだ、君の名前だよ。スノー・ナイト」

「…………スノー・ナイト。僕の……名前……」

「さぁ、おいで、スノー」

 藍染はそう言うと、振り返り、部屋の入口へと歩いていく。
 スノーは立ち上がり、おぼつかない足取り藍染の後を付いて行く。
 部屋を出たところで、スノーは部屋を振り返った。
 自分が出てきた大きな水槽。
 床に流れた黄緑色の液体。

「どうしたんだい? スノー」

 藍染がスノーを呼ぶ。
 スノーは正面を向き、藍染の元へとフラフラと歩いていった。