狂人を崇める少年





 ― 6 ―

 黒焦げになったデュラムが、音を立てて床に倒れる。
 と同時に、右腕が、ガサリ、と音を立てて崩れた。
 それを見るだけで、エルクがどれ程の電流を流し込んだのかが分かってしまう。

『…………』

 静まり返る室内。
 その静寂を、シャルデンが破った。

「……殺す必要は、無かったんじゃないデスか?」

「不服そうだね、シャルデン」

 シャルデンの呟きに、クリードが答える。

「…………そうデスね。彼の行動や発言には問題もあり、反省の色は無かった。ですが――――」

「僕は当然の処置だと思うよ」

 シャルデンが言い終わる前に、ドクターが遮り発言する。

「ここ最近の彼は能力を過信し、自己を見失っていた。そのままにしてもいづれ、星の使徒に破滅をもたらしてただろう…………」

「同感だな」

 ドクターの言葉に、シキが同意する。
 シャルデンはそのような意見を持つ彼らを、信じられないといった表情で見ていた。
 クリードがエルクを放し、テーブルに置いたグラスを手に取る。

「そういうことだよシャルデン」

「…………」

「この男はもはや同士ではない。単独行動をし、無謀にもトレインに挑み敗北……。役立たずの生ゴミだ」

 シャルデンとキョウコの瞳が、更に大きく見開かれる。
 同士だった男を殺した上に、生ゴミ扱い。
 2人はそれが信じられなかった。

「そう、生ゴミだよ!! フフフフフ、ハハハハハ、フハハハハハハハハハ!!」




 集まりはすぐに解散となり、エルクはソファーに身を委ねていた。
 隣にはリオンが同じように座っている。
 2人に会話は無く、ただボーッとソファーに座っているだけだった。
 しばらくして、

「なぁ、リオン。リオンもさっきのは、殺す必要は無かったと思う?」

 ポツリと、エルクが言った。
 リオンは少し間を空けてから、

「…………分からない」

「そっか」

「たしかにシャルデンみたいに、あの程度で殺す必要はあったのかって思ったりする」

「…………」

「でも、ドクターが言ったように、この星の使徒に破滅をもたらされるのは困る。腐った大人達が支配する世界を、この道の力を使って変えてやるって決めたんだから」

 リオンはそう言って、目を閉じた。
 それを見て、エルクも同様に目を閉じる。
 しかし、頭の中では先程のことを考えていた。
 本当にデュラムを殺す必要はあったのだろうか。
 痛めつけるだけでもよかったのではないか。

(――――でも、デュラムはクリードに逆らった)

 エルクにとって、クリードは全て。
 そのクリードに逆らうことは、許すことの出来ないものだ。

(もう考えるのはやめよう…………)

 自分はクリードに逆らった者を殺したのだ。
 クリードだって喜んでくれたじゃないか。
 そう、

(クリードが喜んでくれたんだから、それでいい)

 徐々にまどろんでいく意識。
 エルクはそのまま意識を落とし、眠りへとついていった――――